そうなのだ、殿宮社長と距離を置けない理由がここにある。
何故かいつも会場までの往復を社長の車で移動するのだ。それも私だけ。
それ故、ケータリング部門の皆には「本来の仕事以外に殿様の秘書も熟して偉いね」とお褒めの言葉……と共に同情と憐みの目を向けられる。
彼(彼女)たちは、社長の本性を知っているからだ。
彼(彼女)たちは、お腹の中では秘書なんて思っていないからだ。
同情するなら変わってくれ! といつかどこかで聞いたこと、あるような? ないような? そんなフレーズを思い出し、厨房の中心で苦を叫ぶが、誰も相手にしてくれない。
当たり前だ。皆、我が身が可愛いからだ。
その薄情なメンバーは現五十名。全て正社員なのはこの部門だけだ。
メンバーは各々クラスを持ち、それに合わせてスケジュールが組まれている。
クラスは富裕層ピラミッドというヒエラルキー(ピラミッド型の階層組織)に基づき、顧客のランクを分けている。
◇Sクラス:富裕層以上[価格:超高額]
◇Aクラス:マス層以上[価格:高額]
◇Fクラス:福祉・ボランティア関係[価格:プライスレス!? で0円]
云わばFクラス以外、お金持ちしか相手にしない、という非常に傲慢で営利な部門だ。


