冷蔵庫から冷却シートを取り出し、社長の額にペタンと貼る。
無防備に眠る社長を見つめ、それにしても本当に美しい人だ、と見惚れる。
夢子やミズ・ミミも美しいが、二人はどちらかと言えば中性的な美しさだ。
でも社長はエロティシズムな男性の色香漂うオスを象徴する美しさだ。
その美しさに捕らわれた私も……要子が自分をバカと云うように、同じくバカなのかもしれない。
しばらく社長の顔をジッと見つめ、ああ、そうだ、とお千代さんの言葉を思い出す。
熱が上がるとそのうち汗をかき始める。タンスの引き出しを開け、ビッグTシャツを二枚取り出し、枕元に置く。
下は……社長、履けるズボンがありません。そのままで我慢して下さい。
スポーツドリンクも必要か、とアパート前の自動販売機に買いに行く。
ブルッと震え、お金を入れ、ボタンを押し、ペットボトルを取り出す。
冬の夜空は空気が澄んでいるからだろう、とても美しい。
普段、くっきり見えない星々が降り落ちるほどに煌めき輝いている。
天上を見上げ、目を瞑る。
そして、どうぞ社長の熱が下がって、明日はピンピンしていますように……と祈る。
カンカンと階段を上り、部屋に入ると……社長が起きていた。
「社長、どうしたんですか、大丈夫ですか!」
「こんな夜中に何処に行っていた」
凄く声が怖いんですけど……。
「飲み物を買いに下に」
「夜遅く一人で出歩くな。危ないだろう」
社長がフラフラ近付く。
「社長の方が危ないです。倒れそうじゃないですか!」
社長の腕を取り、「人の心配するより自分のことを心配して下さい」と逆に社長を叱り付ける。


