「俺を温めてくれ」
腕を私の体に巻き付け強く抱き締める。
「社長、どうしたのですか?」
いつもは強気の社長が妙に弱々しい。
「ムチャクチャ寒い」
これはもしかしたら……熱が上がる前?
「社長、体の具合はどうですか?」
「凄くダルイ」
ウワッ、やっぱり。それは大変だ!
「社長、ちょっと放して下さい」
「嫌だ!」
グッと力が入る。
誰だ、この駄々っ子のような人は!
子供のような社長を宥めすかし、すぐさま布団を敷く。
ブルブル震える社長を寝かし、お粥を作り、置き薬とミネラルウォーターを用意すると、社長の枕元に座る。
「社長、少しだけでも食べて、お薬を飲んで下さい」
フーフーとお粥を冷まし、社長の口にレンゲを運び口に入れる。
素直に食べる社長も五口が限界のようだ。口を開ける気力もなさそうだ。
それでもやっとのことで薬を飲ます。
「寒い……今夜はお前が添い寝をしてくれ」
社長は掛け布団の端を持ち上げる。
お千代さんもこうやってよく温めてくれた。人肌ほど温かいものはない。
私はコクンと頷くと、スルリと社長の横に入る。
そして、お千代さんがいつもしていてくれたように、社長の背中をトントンと叩く。子供のような社長が私の胸に縋り付き、いつしか寝息を立て始めた。
「社長、社長」
小声で呼んでみるが、目を覚まさない。
ホッと安堵の息を吐き、ソッと布団を抜け出すとお風呂に入る。
いつもなら、冬だからと一晩入らなくても気にならないが、やはり社長が横に寝ていると思うと凄く気になる。
とっておきの試供品、薔薇のボディーソープで体を洗う。
うん、いい香り! 流石とっておきだけある。
ホカホカと湯気を上げる体にお気入りのモコモコパジャマを着て、ドライヤーで髪を乾かし、社長の様子を見に行く。
ワッ、大変!
布団を蹴飛ばし、真っ赤な顔でウンウン唸っていた。
熱が上がってきたようだ。


