厨房に入ると私も下準備に取り掛かる。
今日は十五時から花菱物産のレセプションパーティーが入っている。
花菱物産は美容関連の器具やサプリメントを扱う会社で、どちらかと言えば鳳凰と同じ成り上がりの会社だ。
担当メンバーは七名。招待客は二百名そこそこらしい。
スタンディング・ビュッフェ形式だから少し気が楽だ。
「いいなぁ、私も行きたかった」
真梨香様が残念そうに溜息を付く。
「何なら代わりましょうか?」
確か真梨香様は殿倉様のバースデーパーティーだったな、とスケジュール表を思い浮かべる。
「バカね、貴女が行かないでどうするの。話の展開を盛り上げてよ」
ん? 私が行くと何故盛り上がる?
「今日のレセプション、メディアでも話題になっていた『美倶楽部ルーム』のオープンのでしょう」
『美俱楽部ルーム』は花菱物産初の試みとして立ち上げられた、美容道場みたいなものらしい。断食道場みたいなものだろうか?
「ということはあの娘の登場よね」
真梨香様が小悪魔の笑みを浮かべる。


