『栄枯盛衰』という四文字熟語がある。
栄えたり衰えたりを繰り返す、人の世のはかなさを云うらしい。
もし、今の私を四文字で表現するなら、そのまんまだが『衰退没落』だろう。



「お嬢様、姫乃様、姫様、お起き下さい。今日は丸玉スーパーの特売日です!」
「う……ん、あと五分……昨日も……丸玉……特売……激安」

ガバッと身を起こすと、目の前にお千代さんの顔があり、思わず仰け反る。

「ウワッ、ビックリさせないで」
「まっ! 失礼な。妖怪にでも会ったような驚きですこと」

お千代さんは、心外だ! と言わんばかりに、深い皺が刻まれた顔をクチャッと歪める。

「いや、そんなことは……」と言いながらも、ちょっと思った自分を叱る。

「で、今、何時ですか?」
「八時を少し回ったところです」

お千代さんは、部屋の片隅のガラステーブルに乗った目覚まし時計に目をやり、ほらご確認を、と顎をしゃくる。

「よかった。隣町まで自転車で四十分。お店は十時からだから間に合うわね」

早速、布団をたたみ、身支度を整える。

「ジーンズにパーカー。姫様、もう少し何とかなりませんか?」
「なりません」
「二十六歳の成人女性ですのに……」

ブチブチ文句を垂れるお千代さんは、放置だ。
これから戦闘開始だというのに、チャラチャラした格好など有り得ない。