そして、千弘ちゃんの話によく出てくる奴がいる。
それが〈大橋莉子〉だ。
中学のとき、勇気出して告ったくせに、
ヘタレな俺は顔を見るだけで体温が一気に上がった。
他の女子とは喋ってても、全然話聞いてねーのに、大橋が喋ったら…結構遠くても聞こえた。
そんなの、初めてでなんか大橋のことやっぱ好きだなーとか思った。
俺の仲いい友達のエリカには、可愛いとか付き合えて嬉しいとかのろけてばっかだったし。
エリカは俺の溺愛ぶりに引いてた。
大橋のことを話す俺は珍しく笑顔らしく、付き合う前より女に告られるようになった。
大橋のことが好きな俺は、可愛いらしい。
まあ、女子ってなんでも可愛いっていうから信用出来ねーけど。
そんな幸せ絶頂のとき、俺はアイツに振られた。
理由は教えてくれなかった。
でも、だいたいわかる。
大橋はもともと俺のこと好きじゃなかったし。
でもアイツ、俺の必死な顔を見て断れなかったんだろ。
だって、俺がどんなに女と話してもヤキモチとかありえなかったし。
大橋と別れて高校生になり、学校が離れても大橋のこと全然忘れられなくて。
女子を見ると、声が似てるとか口が似てるとか、大橋と似てるところを探すようにまでなっちゃったし。
そして今、可愛い子がいるというので大橋が有名になってる。
そんなの知ってる。
もう俺は焦るどころじゃなく、狂ってしまいそうだった。
でも、神様は俺にチャンスをくれた。
「あいつさー、朝飯食えなかったぐらいですげー機嫌悪いわけ。まじ笑える…」
この千弘ちゃんが傘を忘れてくれたおかけで、俺は再会することができた。