「大橋」
あたしの嫌いなひくい声でつい振り返ってしまう。
そこには帰ったはずの西谷が走って戻ってきていた。
…なぜか怖い顔してる。
な、なに?!
あたし何かしたっけ…?!
真顔で近づいてきた西谷は、あたしには触れずに顔をぐいっとあたしの方に寄せた。
びっくりして目をつぶる。
「……また会える?」
耳元で力なく言われた言葉。
その一言で、あたしは動けなくなった。
目を開けると、西谷はもう遠かった。
もう帰ってる西谷の後ろ姿を黙ってみることしかできない。
心臓が大きくなったような感覚。
女の子にあんな言葉を言うなんて、あいつには簡単だし、いつもしてることなはず…。
だから…ドキドキなんてしたくないのに…

