「りーちゃん、まだ練習してんのー?」
体育館の入口に誰か来た。
「陽光っ!」
さっきまで俺しか見てなかったこいつが、他の男のとこに走っていく。
「てか、永和先輩じゃん!」
「え?知り合い?」
「は?俺、バスケ部って言ってんじゃん!」
「そーだっけ?」
アホ丸出しで話すあいつを、これ以上見たくなかった。
もやもやする…なにこれ。
黙って出て行こうとすると、それに気づいたあいつが言った。
「ちょっと!あたしに勝ったんだから…誰にも負けないでよ!あ、選手賞とかもとってよ!」
……は?
なんで俺が他人のために頑張んなきゃいけないの?
無視して、体育館を出ようとした時。
「バスケしてるとこ、カッコいいじゃん」
そう聞こえて後ろを振り返ると、そこには満面の笑みのバカがいた。
…ありえねー。
なんでこんな奴…。
なんでこんなバカみたいな奴好きになるかな。
…うるせーよ、心臓。
「…待ってれば」
そのとき、俺は決めた。
こいつのために、好きじゃないバスケを頑張ってみること。
そんで、こいつに好きっていうこと。

