そんな俺は、つまんない日常に飽きてて。
部活もサボって、女と適当に遊んだりしてた。
週に一回の部活休みの日、雨が降ってて遊びに行く気にもなれなくて。
(そろそろバスケやめよっかな)
なんとなく足が体育館に向かってて、
中から音が聞こえたから覗いてみた。
そこにはあの可愛い子がいた。
ラケットを持っているから、テニス部なんだと思う。
「なにそれ?」
特に興味なかったけど、暇つぶしに聞いてみた。
「え…練習だよ」
案外、普通に答えてくれたからちょっとびびった。
高嶺の花って言われてんだから、無視でもされると思ってた。
その可愛い子は、俺のことなんて気にせずまた一人練習を始めた。
なんか見てみたくなって、その場に座って観察する。
一心不乱っていうか…本当に真剣に練習するからすっげー意外だった。
そんで、わかんなかった。
「…なんでそんな一生懸命やんの?」
ほんとに不思議。
なんで部活なんかに本気になるわけ。
所詮、中学だけの思い出にすぎないのに。
俺が発した声は意外と大きかったらしく、その子にちゃんと届いた。
「は?何言ってんの?…変なやつ。」
「…」
「てか、いつまでそこにいんの!…今、練習中、邪魔!」
頬を膨らませて、こっちにどんどん迫ってくるその子はさっきまでと別人のようだった。
呆気にとられる俺。
こんなの久しぶりの感覚だ。
女子に邪魔って言われたの、初めてじゃん。
「ん?あんた、バスケ部でしょ?!」
「…」
「友達が騒いでたから知ってる!」
…すっげードヤ顔…。
こいつ…まさかただのバカ?
「…そろそろ戻る……」
こいつは危険だって俺の信号が反応してる気がしたから、その場を離れようと立ち上がる。
「待ちなさいよ!」
突然そいつが、たまたま転がっていたバスケットボールを俺に投げてきた。
「…っ?!…あっぶな…なにすんの」
ギリギリのとこでキャッチしたけど、顔にぶつかりそうだった。
「しようよ!バスケ!」
目を輝かせて言うそいつを見て、勝手に体が動いた。
「…いーよ。叩き潰すし…」
投げてきたボールを片手で持って、軽く投げ返した。
その瞬間。
〈シュポッ〉
その場から綺麗なフォームでシュートを放ったのは、他の誰でもないそいつ。
「よっしゃ!」
ガッツポーズしてるそいつから目が離せなくなる。
「あたし、運動全般なら何でも出来るんだよね〜」
ニヒヒと気持ちの悪い笑みさえも、カッコよく見える。
さっきまで子供みたいに話してたくせに
さっきまで可愛いとか思ってたのに…
すっげーかっこ良く見えた。
「バスケ部のくせに、あたしに負けていいんですかー?エースさん」
満面の笑みでこっちを見てくるそいつに不覚にもにドキッとした。
急に可愛いくなるなんて…ずりー。
「…誰も負けるとか言ってねーし」
「っ!!」
そのあと俺は、柄にもなく本気でバスケをした。
そいつがかっこ良すぎて、負けたくないって思った。