ーーーガラッ



「永和ー!」

ふわふわした女の子の声。



いい匂いが、ドアから出てきてあたしの前を通っていく。

お花の匂い…!




「これあげるよ。今日作ったの!あたしの女子力の塊!」
 

女の子がクッキーを渡してる。


「ありがと、エリカ。」



…っ!…。


エリカちゃんって…あの子だ…。

やっぱり付き合ってるのかな…?



…エリカちゃんも大人っぽくなってて全然気づかなかった。

いいなぁ…その可愛げのある感じ…羨ましい…。





   

ーーーガラっ



またまたドアが開いた。


今度はさっきよりも勢いが強い。




「莉子、ほんとごめん!」


千弘が息を切らしながら、リュックを片手に出てきた。



「ううん。全然大丈夫!」

「うちの母さんが、また頼みごとしたんだろ?こんな雨の中…ごめんな…」


本当に申し訳なさそうな千弘。

そんなにへこまなくていいのに…らしくないよ。



あたしの少し濡れた髪の毛を、わしゃわしゃとタオルで拭いてくれる千弘。

本当に優しくて、心配症だなあ。




「へへっ…くすぐったいや…」


「何笑ってんだよ、ばーか…」




なんか心も頭もくすぐったくて、笑い合う。


そして、千弘は、ふとあたしの横に視線を移した。


エリカちゃんはもういなかったけど、そこには西谷が立ちすくんでいた。



「ん?…遥斗じゃん。まだいたのか?急いでんだろ?」


「おう…」





…え、知り合い?!


あ、そりゃそうか!同じ塾だもんね。

千弘が変な影響受けてなくて、よかったよ!  





「…なあ…そいつと千弘ちゃん…なに?」


西谷があたしの方をじろりと見た。




「ん?ああ、ほら、いつも言ってる幼馴染」

「……は?」




平然と言う千弘を西谷は目を大きく開いて唖然としてる。

そんな驚くこと?

今の流れ見てたら、わかるでしょ…普通に…。




「莉子、はじめましてだろ?…こいつ、俺の親友の遥斗。」


「……はあっ?!」



……思わず西谷と同じ反応をしてしまった…。

バカにできないや…。



…てか、美咲がいつも嬉しそうに話してた親友って……西谷?!


西谷とあたしにこんな繋がりがあったとは…。





「…何びっくりしてんだ?二人とも」


千弘はあたしたちの雰囲気についていけてない。

気まずい空気の中、明るい声で話してる。




「…ち、中学が同じだった…」


あたしが言うと、へ〜と意外そうにあたしたちを見てくる千弘。


さすがに付き合ってたなんて、言えない。





「腹減ったから帰るぞー莉子」


千弘が、あたしが持ってた傘をとってさす。






「あ、」



西谷がまた驚いてる。

なんに対して驚いてるんだろう…?


まあ、嫌いな奴の考えることなんてわかるはずないし。




「じゃーな、遥斗!」

「お、う…じゃあね…」




動揺しすぎ…。


いつもの余裕はどこへやら。

なんかスカッとした…。



そんな気分のわたしです。