…うそだ。
これはきっと夢なんだ。
じゃなきゃ、なんであいつがいるの…。
そこには、近くにいたインタビューの人からマイクを奪っている西谷がいた。
「久しぶり、大橋」
その顔を見た途端、寂しいという気持ちがあふれ出してしまった。
あたしは、ステージから降りて西谷の方へ走った。
そして抱きつくと、涙が止まらなかった。
「……っ…うう…にしのや〜」
「ぷっ、泣いたらブスになるよ」
「うるさい…っ!…」
「てか、疲れた。部活終わって走ってきた」
「ありがどぅ〜」
もう涙で西谷の顔は見えないけど、笑ってるのはわかった。
自分でも、なんでこんなに泣いてるのかはわからないけど、とてつもない寂しがりやだとは自覚した。
「ねぇ…あれって…」
「西谷遥斗じゃん…!やば!」
「莉子さま、付き合ってたのか?!」
「お似合い…」
周りの声で、やっとこの状況を思い出す。
…みんな…見てるよね…。
今更だけど…恥ずかしい!
泣いちゃったし…。
「…てか、なにこれ。ミスコン?」
「…うん。無理やり出ることになっちゃって…」
「…………ふーん…」
っ!
絶対何か企んでる…。
西谷がふーんって言う時は、興味ないわけじゃないっていうのは最近わかったこと。
「に、西谷っ!逃げようっ!」
あたしが腕を引っ張るのに、ビクともしないバスケ馬鹿。
「…気にいらねー…大橋は俺のだよね」
「っ?!…//」
…やばい。
ときめきっていうか、もう病気みたいに心臓がばくばくいってる。
「…ばか」
顔が、熱い…。
そのとき、当然西谷が、来ていたジャンパーをあたしにかけた。
「な、なにっ?!」
「…赤くなってんの、他のやつに見せたくない」
「ああああ赤くなんてないし!」
「…お前もツンデレかよ」
「っっはあ?!」
…もうやだ。
あたしじゃないみたい…!
西谷の顔がうまく見れないよ…。

