「それでは!皆さんおまたせしました!大橋莉子の登場です!」
…どどどどんな紹介ですか?!先輩!
これって…出て行って誰?ってなるパターンじゃん…。
…こうなったらもうノリで行くしかない!
あたしは慣れないヒールとドレス姿に見を包み、ステージに立った。
観客の反応が怖くて、目をつぶる。
その瞬間。
(うおおおおおおおおおお!)
大きな歓声が上がった。
え…?あたしに…?!
あたしの横に美少女がいるとかじゃないよね…?
あたしはダッシュでステージ横のトイレに向かう。
鏡が見たかった。
まだ一度もメイク後の私の顔とこんにちはしてないもん!
ーーバッ
勢いで鏡を除くと、
そこにはあたしとは思えないかわいい顔があった。
だ、だれ?!
…メイクってすごい!
…クラスの女子の技術すごい!
…はっ!
戻らなくてはっ!
さっきまで嫌だった気分が、少し晴れた。
こんなに可愛いなら、堂々と出れる!
ちょっとモデルっぽく歩いてみた。
すぐやめたけど…。
ステージに戻ると、先輩が進行を続けた。
「じゃあ、自己紹介どうぞ」
「お、大橋莉子です!絶対に焼き肉食べたいので…投票おねがいしますっ!」
噛まずに言えたぁ!
よし。ミッションクリアです。
「好きだ!」
「は?!お前、ずりーぞ!」
「好きです!付き合ってください!」
突然周りから、大きな声が聞こえる。
な、なんですと?!
好き?!あたしのこと?!
「えっと…」
「どーすんの?大橋。返事は?」
いたずらそうに先輩が口角をあげる。
その笑顔に少しときめいた。
「…っ、ご、ごめんなさいっ!」
あたしがうつむいて言うと、会場が静まり返った。
そして、誰かの声が響いた。

