黒板の前では、男子と女子が大騒ぎしていた。
「マジで?!優勝したら焼き肉?!」
「すごくない?!」
や、や、焼き肉?!
食べ盛りのあたしのお腹が、運動を始めた。
「五郎!焼き肉って、どういうこと?!」
「は?莉子、知らねーの?」
五郎が黒板を指差した。
そこに書かれていたのは…
《 2の2の生徒よ
あさっての文化祭でミス・ミスターコン開催されることとなった。
各クラス、男女一人ずつ候補者を出さなきゃならん。
そして!優勝したクラスには焼き肉食べ放題が待っている!
そのクラスの担任、そう、俺にもだ!
つまり、頑張ってくれたまえということだ。
風を引いてしまった俺のために、焼き肉を勝ち取ってくれ…
By森担》
…なにこれ…?!
てか、森担風邪引いたの?!
体弱いなぁ…。
あたしはコンテストの担当だけど、焼き肉っていうのは初耳なんだけど?!
た、食べたいっ!
「ねえ!莉子出なよ!」
「…は?」
…あ、あたし?!
急に美佳があたしに振ってきたから、体がびくっとする。
「ほんとだよ!やってよ!学年1じゃん」
「莉子なら断トツだろ!」
希良梨も大輝も賛成してるし…。
感覚が麻痺してるんじゃかいかな…。
あたしがミスコンに出たら、最下位しか待ってないよ。
「…大橋さんなら優勝確定じゃね…?!」
「…だよなっ!」
みんなが小声で言ってるのが聞こえて、びっくりして見ると、目が合う。
「…む、無理しなくていいよッ…」
「う、うん!大橋さんが嫌なら…全然…」
…な、なんか誤解された…。
怒ったって思われたのかな…?
「おいお前ら!」
突然、五郎が大きな声を出した。
「俺が莉子がミスコンに出ることを許可する。なんてったって、俺はこいつの師匠だしな!!!」
でかい声で言い切った瞬間、クラスは静まり返る。
し、師匠の言うことは…聞かなきゃだけど…。
あんなステージに立つなんて…無理!!
「師匠っ!…無理です!できません…」
「大丈夫だ…。お前ならできるはずだ…。」
「でもわたしっ…」
つい入り込んでしまう。
五郎と喋ってると、周りが見えなくなってしまうんだ。
「おい、そこのバカ」
聞きなれた声がすると思ったら、となりのクラスから千弘が来ていた。
「うっせーよ、バカ。五郎さまに迷惑かけんな」
「っ、はあ?!」
千弘は、なにげに師匠を尊敬してる。
理由はやっぱり…メロンパンみたいです。
なんかあたしと千弘って、変なとこで似てるんだよね…?
「もうっ!千弘あっち行ってて!」
「お前、もう静かにしとけよ…バカがバレるぞ」
「…っ、ち、ち、ちび!!、」
ま、負けた…。
あんなでかい奴に…ちびと言ってしまった…。
…自分に言ってるようなもんだ…。
「よし!じゃあ莉子で決定な〜」
「焼き肉、焼き肉〜♪」
五郎と大輝は踊りはじめた。
バカって、嬉しいことがあると踊っちゃうのかも…。
現にあたしもそうだったし…。

