ちゃら男くんの好きな子。




「ねえ!会長だよ!」


「え…となりの子って彼女かな…?」

「えー。ショックー」




ただ二人で帰ってるだけなのに…。


…なんかこの間もこんなことを聞いた気がする。

西谷とか先輩とか、千弘とか…イケメンに囲まれてばっかだもんな〜。


あたし、絶対いつか刺される…。

はぁ〜考えただけで怖い…!





「楽しみだな〜文化祭!」



…周りの視線に全く気づいてない先輩。

人気なのもわかるよ…。



「…そうですね!がんばりましょう!」


「おっ!やっと元気出てきたじゃん」

「え?」


「なんか最近様子がおかしいからさ」




…優しいなぁ…。

いつも大きな心で包んてくれる。

きっと先輩の彼女になる人は幸せなんだろう。


…あたしはそこになりたいんじゃないんじゃなかったんだっけ?



「うっわ、また暗い顔してるーお仕置きかなー」

「ご、ごめんなさい!」


「ははっ、うっそだよー」



こうやって先輩の隣に、軽い気持ちでいたらいけない。

友達でいたいのか、先輩のこと好きなのかはっきりしなきゃ…。



「ここでいいです!ありがとうございます」


あたしは、家に近いコンビニのところで立ち止まる。



「そっか…あのさ、」


先輩の声がいつもより少し低くなる。




「今度の大会…来るんだよな?」

「…はい。」


「伝えたいことあるから…絶対来て」

「……は、い。」



じゃあと言って手を振ってさっき通った道を戻っていく先輩。

逆方向なんだ…。

やっぱり優しい。



足の長い先輩がわざとゆっくり歩いてくれてたり、あたしの好きな話ばっかりしてくれたり。

あたしって…そんなことに気づいてるくせに、なんで気持ちを伝えないんだろう…。

チャンスはいっぱいあるのに…。



好きなのに…。

好きだよ、本当に。




「…あたしって…うざい…」



乾燥した風に、その言葉は流された。