(莉子SIDE)
「…どうしたの」
付き合って一ヶ月になったころ、あたしは彼氏の遥斗を屋上に呼び出した。
「…はいっ!これ!」
「…?」
笑顔であたしが渡したのは、小さな紙袋。
「開けてみて!早く!」
「…うん」
その紙袋の中に入っているのは、たくさんの絆創膏とミサンガ。
「…これ、なんで…」
「ふふっ!びっくりした?!あのね、もうすぐ大会だから、しっかり頑張ってもらおうと思って!」
中学生だから、バイトなんてできないし…残念なことに金欠だったあたしだったけど、なんとか考えてこの2つにした。
「いっーぱい転けても大丈夫!これだけ絆創膏あるんだから!だから、あたしが大好きな頑張ってる遥斗を見せてね!」
「…っ……!」
遥斗は何も言わず、ただその2つを見つめてる。
…残念だったかな…こんなプレゼントなんて…。
「…はぁああああ……」
遥斗がいつもの大きなわざとらしいため息をついた。
そして、その場にしゃがみこんだ。
「…やばい」
「…え?」
「今までもらったもんの中で、一番嬉しい…」
その声が、あまりに小さくて、あたしはなんだか可愛いなぁと思った。
そして、遥斗と同じ目線になった。
「…そんな嬉しいんだ。遥斗くん」
「……うっざ。…」
素直じゃないなぁ…。
照れてるなんて、珍しいからもっと見ておこう!
あたしは上機嫌で遥斗を見続ける。
「…マジで見んな…」
本当に珍しく、その後遥斗は照れたままだった。
そんなに嬉しかったんだ?
意外…まあ、そんな喜ばれたらこっちまで嬉しくなっちゃうよ!
いつもなら、このあと本調子に戻って、あたしをドキドキ仕返してくるくせに。
なんか…調子狂うな…。

