ちゃら男くんの好きな子。



あたしとあいつが付き合ってたのは中2と中3の時。

 
中一のときに初めて喋って、それから全然話さなかったのに…

突然、中2の途中で呼びだされた。





「お前のせいでこんなのとっちゃったじゃん…」



照れながら、あたしに見せたのはメダル。

バスケで全国優勝を果たして最優秀選手賞をもらったらしい。



「これ、あげる」

そう言ってあたしに投げたメダルを慌ててキャッチすると、西谷は嬉しそうに少し笑った。



「も、もらえないんだけど!大切に保管しときなよ!」

「は?お前が欲しいっつったんじゃん」

「へっ?!」



…そんなこと言ったっけ…?

全然覚えてない…。



メダルはすごく重くて、やっぱりあたしなんかが貰っていいのか迷った。

けど、西谷の嬉しそうな顔を見たら返せなかった。



「お前…こんなの獲らせた責任とれよ…」

「え?」




突然あたしは、腕を引っ張られてバランスを崩す。

そして、そのまま西谷の胸の中にすっぽり埋まる。




「俺の近くで俺だけ見てて」

 


西谷の低くて、かすれた声で心臓が脈をうつ。

あたしのためにメダルまでとってくれて、こんな可愛いこと言うなんて…ずるい。




「…もう他の人なんて見れるわけないじゃん…」




あたしが小さくつぶやくと、

いつも人の話全然聞いてないくせに、その声ははっきり聞き取った西谷。



あたしをばっと引き離すと、目が丸になってる。

けど、すぐにいつもの調子に戻って、





「…なにそれ、俺のこと大好きじゃん」





そうからかってきたくせに、西谷の顔は今まで見たことないくらい優しい顔をしていた。


その時の笑顔は、今も忘れられない。


あたしは、その自信と喜びにあふれた顔に…本気で好きになってしまった。