「やっと最後だよ!」
「…元気すぎ。…猿じゃん…」
身も心もボロボロになってる西谷を気にせず、観覧車に乗り込む。
あたしは全部の乗り物を周りながら、美佳を探していたけど、結局会うことはなかった。
観覧車は、どんどん上に上がっていく。
太陽が沈もうとしてるのが近くに感じる。
「きれい…」
あたしのつぶやきが、思った以上に響いて…沈黙な西谷に気づいた。
不思議に思って、西谷の方を見ると目があった。
すぐに気まづくなって、外に視線を戻す。
な、なんか…恥ずかしい…。
なんでさっきまでのあたし、普通に楽しめてたんだろう?!
急に恥ずかしさがこみ上げてきて、顔が熱くなる。
「なあ…」
沈黙を破ったのは、西谷だった。
「猿にも好きな奴って、いんの?」
「…はあ?!…」
猿っていった?!
あたしのことを?!
こいつ…観覧車乗る前にも言ってたよね?!
言い返してやろうと西谷を見たら、意外にも真剣な顔してて、言えなくなる。
「どうなの?」
「っ…」
意外な質問に驚いて、また目が合う。
「っ……い、るよ…」
「…ふーん…」
返事をした時に、頭に浮かんだのは…西谷のたまに見せる笑顔。
今日一日のことが、頭の中に蘇ってきた。
「…そっちこそ…エリカちゃんとどうなの?」
あたしができるだけ自然を装ってきくと、西谷は目を丸くした。
「は?エリカ?」
「…好きなんでしょ?…」
「…はあ?」
西谷は急に一生懸命なにかを思い出し始めた。
何考えてるんだろ、あれ…。
「…なんで俺とエリカ?」
「…はぁ?!…中学の時からそうだったじゃん…だからあたしは…っ。」
そこまで言ってやめた。
ここからは言っちゃダメだ。
「こ、この話やめよっか!ね!」
「俺の好きな子はエリカじゃない」
「…?!」
西谷が落ち着いた声で言った。
「エリカは中学の時から彼氏いたし…」
「え?!」
…そ、うだったんだ。
あたしの勘違い…だったんだ。
でも、きっとその事実を知ってても
あたしは別れを告げてた。
観覧車が終わりに近づいた頃、西谷はあたしに紙を渡した。
見覚えがある。
というか、持ってる気がする…。
「今度のバスケの大会の決勝戦、来て」
「…え?…それって…」
「あ、そっかお前のとこじゃん」
「…うん。行くつもりだった…」
あたしの言葉に、また目を丸くする西谷。
けれど、すぐさま納得したようにうつむいた。
「…先輩見んの?」
「…?!」
なんで…知ってるの?!
まさか…千弘…?!
「好き?そいつのこと」
「……っすき…だよ…」
本当のことなのに、嘘ついてるような感覚。
体が石みたいに動かない。
「お疲れ様でした〜」
突然、愛想のいい係員さんがドアを開ける。
「…」
「…」
あたしたちは、その後話すことなく美佳たちとの待ち合わせ場所に行った。