『栞ちゃんの運命の人は、本屋で出逢うのよ!』

職場の更衣室で、昼食を食べ終えたひと時に、先輩社員が、そう断言する。

栞は苦笑いしながらも、

“またこの人はいい加減な妄想を…”

と呆れ果てる。

自分と一回り以上年上の、この40代の契約社員は、何かにつけて想像力を働かせる、いわゆる【妄想女子】。

決して悪い人じゃないのだけど、平凡な毎日が続くと、刺激がほしいのか、若い女子社員の恋愛話を欲しがり、ほとほと困ってしまう。

『高橋さん、何を根拠にまた…』

同じ課の先輩である村田さんが、見かねて助け舟を出してくれる。

そもそも、なぜこんな話になっているのかというと、いつものように恋愛ネタを欲した高橋さんが、“栞ちゃんに合う男ってどんな人だと思う?”と言い始めたことが、発端だった。

『根拠なんてないのよ』

悪びれる風でもなく、あっさりと言い放ち、

『でも、栞ちゃんに合う男って、絶対、本屋にいる気がするのよ』

何故か確信をもって断言する。