『第2レーンから紹介していきましょう。
△×大学4年、アオヤマ ミレイさん。』




テレビでは選手紹介に移っていた。




俺はゴソゴソと大きなリュックサックから靴やTシャツやらをとりだす。


必要なものを一式取り終えた頃に………







『第5レーン、秀徳経済大学2年、新田涼々さん。』






耳を疑った。






『秀徳経済大学、2年、新田涼々さん』




先ほどの女子アナの言葉が頭の中で繰り返される。




バッと振り返ると、テレビに涼々の姿が一瞬写り、

すぐに次の選手に切り替わった。






「お、おい泰来、今……、涼々って言ったか?」


「い、言いました…ね……。」




涼々の名前を聞いて同じく驚いている泰来に聞いた。





確かに、



『新田涼々』


って言った。





「まじかよ………。」


俺はテレビに釘付けになった。








『以上8名により女子100m決勝、スタートです!』






アナウンスにより、アップからカメラが引かれ、選手が全員見えるくらいに広がった。





「涼々だ………。」




5レーン。

ちょうど真ん中のレーンに立つのは




紛れもなく涼々だった。








『やはり注目は初めて全国大会にやってきた新田涼々でしょうね。』

『そーですね、彼女がどんな走りを見せてくれるか、期待できますね。』

『予選、準決勝、ともに1位で通過、期待の新生、新田涼々に注目です。』







彼女は初めての全国という舞台に立っていた。

あいつは陸上をやめてなんかいなかった。





まだまだ陸上をやめられない、そんなやつだったんだ。