俺は高校を卒業して以来、陸上部のやつらには一度も会っていない。
ずっとこっちで陸上をしていた。
たまに連絡を取る程度。
翼は東京まで一度来たらしいが、時間が無くて俺の大学にまでは来れなかったと言っていた。
そろそろ会いてーな。
だから、いつだって連絡を取れるように携帯は肌身離さず持っている。
そして、涼々の居場所を知るため。
結局涼々は、俺達に進路を明かさずに去っていってしまった。
翼なら知っていると思って聞いてみても、知らないの一点張りだった。
”あいつのことだからどっかでやらかしてんじゃね?”
彼氏なのにほんとあっけらかんとしてるやつだ。
俺なんか、美月がいなくなったらもう、生きてけないと思うかもしれないところだけど。
「てか、走ってよかったの?」
「あ、やっべー!忘れてた…。まあ、痛くないから大丈夫だろ。」
右足に重心を乗せてぴょんぴょんと跳ねてみせる。
すると、もう、といって美月が頬を膨らませた。
俺は2ヶ月前に大学選抜の大会で、
幅跳びの着地に華麗に失敗してひどい捻挫をした。
おかげで全国大会出場を逃していた。
でもすでに、ある程度復活の兆しは見えていて、3ヶ月後の大会では普通に八種競技をする予定だった。
「あっつーなー。」
トラックまで向かう道のり、自然と言葉が口から漏れた。
「だって7月だもんねー。」
木々の葉は青々と光り揺れる季節、
「さーーて、今日も部活頑張るか!」
「はいはい、頑張って」
いつも俺を見上げながら笑う美月にニコッと笑い返した。