階段を全力で駆け下り、校庭を右に曲がってトラックに一度出た。
そして、倉庫に隣り合わせる少し大きめの建物に向かう。
ガラガラガラ………。
扉を開けると、全国大会ぶりに来る部室はいつもと変わりなかった。
懐かしいな………。
全員が部室に入った時………。
「卒業、おめでとうございますっ!!!」
泰来の声とともに部員全員が奥の方にある部屋から出てきた。
何人かは花束をもっていて、それぞれが俺達に渡してくれた。
「翼先輩、お疲れ様でした!」
唯一の2年、長距離の敬に花束と色紙を渡された。
赤い花と、オレンジの花?
なんだかわかんないけど綺麗だった。
それから色紙にざっと目を通すと、様々な色でメッセージが寄せ書きされていた。
その中には、駅伝部の山口からのものもあった。
『引っ張ってくれてありがとうございました!』
『たまに見る面白い先輩が最高でした!』
『これからも勉強頑張ってください!』
『たまには遊びに来てくださいね!』
『涼々先輩とお幸せに!』
最後にはみんな同じことを書いていて、でもそれが心から嬉しくて頬が緩む。
「ありがとうな、敬。がんばれよ?」
「………はい。」
こいつは真っ直ぐな目をしている。
今年度は全国大会には行けなかったけど、必ず次は行ける、努力家で、本気なやつだから。
それから、部室の壁にメッセージを書いた。
『青葉高校に来れてよかったさいこーー!』
東のバカでかい字。
『このメンツで出来てよかった、頑張れよ、後輩!』
いつまでも後輩思いのいい部長だったつばめの字。
『みんなの走る姿はいつだってすごくカッコよかったよ!』
丸くて女の子らしい有姫の字。
『走ることの楽しさと、辛さと、嬉しさを教えてくれてありがとう!』
涼々の、これまでの思いがすべてこもったきれいな字。
『走ることは最高に楽しかった、ありがとう!』
そして、俺のガタガタな字。
書き終わって壁全体を見つめてみると
『本気と、努力と、陸上の意味を知ったよ、青高忘れねーよ!』
ちょうど一年前に書かれた樹先輩の字が目に入った。
今、樹先輩は全国で活躍するトップスプリンターになっていた。
ここに思いを残していった先輩たちは、今それぞれの道で輝いている。
中には、俺の知らない人たちや、
俺が生まれるずっと前にここで陸上をしていた先輩たちの名前だってある。
だけど、全員がきっと、輝いている。
それぞれの目標とともに。
陸上は、そういったこと全部教えてくれるスポーツだった。
ありがとう、青高陸上部………。


