風になれ




12周は長い。





だから前半はできるだけスピードを出さないようにする。




前に出るやつらは勝手にでろ、という感じ。





ただ、いつでも前に立てるように先頭集団には入っていた。









今年はそこまで強いやつらがいるわけではないらしいが、全国を狙えるような奴らはうじゃうじゃいた。





俺も、その中のひとりだったりするけど。







レース序盤は、アナウンスがよく耳に入った。





アナウンスを聞きながら、

時計を見ながら、





正確に、

正確にレースを進める。






「はぁ、はぁ、はぁ」






周りの息遣いも余裕を持って聞けるくらいだ。




まだまだいける。







スパイクは履かず、

レース用のとても軽い靴で走っている。





タータンの感覚が薄い靴底を通してそのまま伝わってくるような


気がした。








”3000mの通過は……、8分、15秒。8分、15秒でした。”





ちょうどいい。




ラスト2000mは、それぞれ1000mを

3分10秒

3分5秒

で刻めばいい。






徐々にスピードを上げる。










「はぁはぁはぁ、」







残り1000mとなったとき、俺は独走状態だった。





遅いやつらをどんどん周回遅れにしながらペースをさらに上げる。






やばい………………。






感じたのはすぐだった。







前半かなりいいスピードで入ってしまい、


なかなかギアチェンジに持っていけない。









全国。

全国。




全国っ!!!!!!






「全国参加標準記録まではあと45秒です。青葉高校、広川くん、いけるでしょうか。」






アナウンスがいきなりそこだけ飛び込んできた気がした。







あと45秒……。






間に合うか……!?