私と涼々は出会った頃からライバルだった。
でも、私が涼々に勝ったことは一度もなかった。
いつも0.1秒や0.2秒差で負けてしまう。
私が十分準備して、
最高のコンディションで臨んでも、
涼々はそれ以上の準備をしていた。
本当に、強いひとだった。
中3の中総体で、私と涼々は全国大会出場を決めた。
私と涼々は11秒台を出し、ともに新記録として讃えられたけど
やっぱりみんなの目的は涼々だった。
いつもスポットライトを浴びてるようにキラキラしていて
羨ましくて、悔しくて、恨めしかった。
だけど、涼々は私のことを見下すことなく、
”ライバルだから!これからも正々堂々戦おうね!”
そう、言ったんだ。
全国大会では必ず勝ってやる……。
そう、思っていたけど
涼々は全国大会には来なかった。
県の選手団の中に、155cmの新田涼々の姿はなかった。
全国大会の日は、地区の総合陸上大会に出るべく、出場を断念させられたらしい。
全国大会の舞台に一人立った時、
私は恐怖を覚えた。
怖かった。
どんな大会だって、隣には涼々がいたから。
風を切って走る涼々と肩を並べて走ったから
私の記録は出たようなもんだ。
全国大会は、予選落ち。
県選手団で一番期待されていたのに、
一番情けない結果で帰ってきてしまったこと。
今だって覚えてる。
涼々の存在は私にとってとてつもなく大きなものになっていたんだと、
ようやく知ったから……。


