《side 楚乃美》
『楚乃美、たぶん今年こそ優勝できるよっ!!』
ある日の部活終わり、
親友で越川高校陸部マネの山中まほに突然そう言われた。
『え?なんで?だって、涼々がいるじゃん』
そう答えた私に、待ってましたというようにまほの頬は緩んでいった。
そして、
思ってもみなかった答えが返ってきた。
『その涼々ちゃん、怪我したらしいよ!』
人の怪我を喜ぶなんて、ほんとは無礼だと思う。
でも、
当の本人を見るまでは
涼々が戦場から居なくなったことが
本当に嬉しかった。
トラック競技
100mは本当に戦場だ。
たった10秒、11秒に何日、何ヶ月、何年という時間をかける。
なのに、勝負はその一瞬で終わってしまう。
神経をすり減らしてまで努力し、汗を流す。
そして、タイムを競う。


