風になれ




招集所は何度も行ったことがあるからすぐにわかった。




松葉杖のおかげで早くは進めなかったけど……。





着くと、まだ招集は途中だった。







ほかの学校の選手が役員にゼッケンを見せたりしていた。








その中で、私は軽く体を動かしている東を見つけた。






「東、氷。」


「あ、忘れてた。サンキュ。」





肩からさげたクーラーボックスを東に手渡し、招集所を後にする。







陣地までの少しだけある距離。






人混みの中をカツッカツッと松葉杖をついて行く。

振り返ってみる人はほとんどいない。





陸上をしている人はほとんどがこういう怪我をするか、怪我をしている人を見ているから見慣れているんだ。






バックストレートから登れる階段まで来たとき………







「涼々………??」





聞き覚えのある声にふり返る。







「髪結んでるからわかんなかったけど、やっぱ涼々だ。」







彼女は私の顔を確認するとニコッとほほ笑む。



長身で、165cmはある。

すらっと細身だけど、昔は水泳をやった事があるらしく未だに逆三角形の肩がよくわかる。






「楚乃美……………。」

「ちょっとだけ、話そうよ。」






赤坂 楚乃美 (あかさか そのみ)。




県内の公立高校で最も強いと言われる越川高校の3年、エース。


そして、



私の最大のライバル。