風になれ




このときはまだ、俺は気づいていなかったんだ。




後ろで涼々が、苦しそうな顔をしているのを。








痛みに耐えるように
必死に歯を食いしばっていたことを。





どーした?って

気づいてあげられればよかった。






そしたら、もう一度。





笑う顔が見れたかもしれないのに。






トラックのメインストレートで人差し指を天に突き刺す彼女の顔が




見れたかもしれないのに。









たくさん泣いて、やっとここまでこれたあいつを

助けてあげられればよかった。







無理すんなよ。って

もっと言ってれば良かったかもしれない。



強制的にでも走るのをやめさせたりして

痛みに耐えるような顔をさせなければよかったんだ。









傍にいるだけで



なんにもしてやれない。








こんな俺を


許してくれ。