「あーーーーー!疲れた………」
結局、10本やって俺が勝てたのは2本だけ。
まじありえねぇ。
短距離じゃないからしょうがない、って言い聞かせるけど、
悔しいもんは悔しい。
涼々、怪我治ってから毎日これだけ走ってたのかよ。
そりゃ、回復はえーわ。
「涼々……?」
トラックの内側で大の字に寝転がりながら、涼々を見る。
涼々はほとんど同じような態勢で、でも右腕で目を覆い
肩で息をしていた。
俺が呼んだのも気づかなかったように。
必死で………。
やべ、まずいことした。
「涼々っ!!」
だるさによく動かない身体に鞭打って、涼々に駆け寄った。
「っ………はぁはぁはぁっ…」
そこまで酷いってわけじゃないけど、乱れていた呼吸は結構荒かった。
「ごめん、やりすぎた。」
俺の左手を涼々の左肩に置き、一定のリズムでトントンっと軽く叩く。
過呼吸になったら袋を口に当てたりするんじゃなくて、自分で戻せるように諭してあげることが一番いいと保健の先生が言ってた。
そのとおりに涼々の肩をさするようにして宥めた。
「ごめっ、もう、大丈夫。」
だいたい10分くらいしてようやく呼吸が元通りになった。
「さすがに、やり過ぎたよ、ごめん。」
起き上がる涼々の身体を支えながら言った。
「誘ったのはこっちだもん。
いい練習だったから。」
涼々の頭についた砂をとるのを手伝いながら、俺は立ち上がった。
「無理すんなよ。」
何回言っただろう。
過保護なくらいに、こいつを守りたいって思う。
手放したくないって思う。
傍にいてほしいって思う。
だけど、今涼々は自分のことに葛藤しながら生きている。
時間と
怪我と
自分と
そういう涼々を見ていると
つい言葉をかけたくなる。
「わかってるって。」
涼々も立ち上がった。
「帰ろ!おなか空いたし?」
てへっと笑う涼々の頭をなで、俺は後片付けをはじめた。


