「一緒に帰れなかったのは、こーゆーことか?」
「そーだよ。」
俺たちの声だけが、トラックに響く。
そして
空気に吸い込まれ
消えてゆく。
「ひとりだとなんでも出来て楽だけど、勝負する人がいないの。
手伝って?」
上目遣いで聞いてくる涼々。
狙いはこういうことか。
俺はそこまで短距離が速いわけじゃない。
下手すれば涼々より遅い。
だからこそ相手になれ、ってことらしい。
スパイクを忘れてきたから、しかたなくランシューに履き替えて400mのスタート地点、
つまりゴールであるところにふたりで並んで立った。
「残り200mの練習だから、徐々にあげれるようにしてね。
設定は一応70秒だから。まあまあでしょ?」
「まぁな。てかなんで400mなの?」
「それはね、200を全力で走りきるには400をある程度のスピード持って走れてないといけない。
だって、200も400も、後半にバテた方が負けでしょ?」
なるほど、と思った。
涼々の200mの走りは周りの奴らと違う。
最初は飛ばしているようだけどそうでもなかったりする。
そのかわり後半の加速はとてつもない。
残り50mからは基本独走。
これがこいつの戦法なんだ。
だから400mのスピードあげてく練習も必要なんだ。
涼々は本当に
よく陸上を研究している。
そんな涼々と並ぶ俺は、
ちょっと恥ずかしかったりもする。


