「つばめさん、がんばーっ」
校門の前で車を降りると、後輩の声がすぐに耳に飛んできた。
懐かしい………。
「懐かしいだろ。」
翼が両手をウィンドブレーカーのポケットに突っ込みながら言った。
「あたしの言いたいこと、何でもわかっちゃうんだね。」
「何年見てきたと思ってんだよ、ばーか。」
ニカッと歯を見せて笑う翼が愛らしいというか憎たらしいというか
無性に抱きつきたくなった。
「翼ありがとっ!!!」
カランカランッ………。
松葉杖がコンクリートに倒れる音がした。
「やめろって、いくぞ!!」
若干顔が紅く染まった翼に微笑み、松葉杖を取り直した。
あたしのスピードに合わせてもらって、トラックまでやってきた。
トラックまでの道は雪がそのままの状態で歩きづらかったけど、
トラックまで来ると綺麗に雪かきがされたようで、若干土が湿っている程度だった。
「校長が俺らのために除雪の機械買ったらしいぞ。」
右足をつかないように、変な態勢でしゃがんで土を触っていると翼が口を開いた。
まあ、駅伝も陸上も全国トップレベルになってしまったら
雪の上走るなんて考え、校長にはないだろうな。
私たちにとっては雪の上走るのもいいトレーニングなんだけど。
「あ!!!涼々じゃんっ!!!おーーーーーーい!!」
そうこうしているうちに、私たちが行く前に最初に部員が気づいた。
今日は駅伝部と合同練習らしく、トラックの中には大勢の人がいた。


