風になれ




「っ―――――――――。」




痛さに顔が歪む。


一歩、踏み出すのを躊躇ってしまいたくような苦痛が全身を襲う。








手術から2週間が経ち、私はリハビリを始めた。




入院してからの約3週間。右足に体重をかけてしまわないよう、ほとんど車椅子で移動だったため、

はじめは全身がなかなかうまく機能しなかった。




それでも左足だけなら普通に動かすことはできる。


松葉杖を使って歩くことも普通にできた。





だけど、



靭帯を繋いだばかりの右足はなかなかの痛みだった。





一歩踏み出すのと同時に激しい、突き刺さるような痛みが襲った。





こんなに痛いなんて、

考えたこともなかった。




足の甲から足首にかけて、リハビリ中は常に痺れているような感覚になった。






でも、私はリハビリをやめようなんて一度も思わなかった。







――――――――早く走りたい………。





その一心でとにかく無我夢中でリハビリを続けた。


最初は1日20分。



手すりを掴みながらまっすぐ立つことから始まった。






それから、


椅子に座って足の指先でピンポン玉をつかんだり、
タオルを掴んだり、

手すりを掴みながら歩いたり。






リハビリをはじめて1週間経つ頃には

1日4時間はリハビリステーションに居座るようになった。





主治医には何度も、


「無理するなよ」


と言われたが、ひとつひとつのリハビリに無理なんてことは無かった。






早く走りたい…………。





その思いをかき消すくらいの暇つぶしにはちょうど良かった。