風になれ




「涼々………。」



声がするほうを見ると、パイプ椅子に翼が座っていた。







「なんで………?」






よく見ると、翼だけじゃない。


東も

つばめも

有姫も

なぜか樹先輩までもが病室にいた。






「部活。」


「は?」





身体を起こすのを手伝ってくれながら、翼が単語で答えた。




「今日が手術って、おばさんに聞いたから、ホントはダメなんだけど俺らだけ抜けてきちゃったってわけさ!」





テンションの高い東がまぁ、わかりやすく説明してくれた。


「翼がどうしても行きたいってさ。」

つばめは苦笑している。






言われ続けた翼は、若干顔を赤らめている。







「しゃーねーだろっ!あんな顔されたまま1ヶ月帰ってきませんなんて許せねーからっ!!!!」





そう言えば、ふたりで屋上で語った日、1ヶ月くらい入院するって言ったんだ。





その時の翼の顔とか、声とか覚えてる。






すんごく不安そうで

翼の方が今にも泣き出しそうだった。






ほんとは、あたしのこと心配しててくれたんだ……。






なぜかとても、ほっとした気持ちになった。


周りの人たちの温もりが暖かすぎて、幸せだと思った。







でも、本番はここからなんだ――――――――。