カラカラカラカラカラ………………
軽快かつ一定の響きを持ったストレッチャーの音が病院の廊下に響く。
今日は、靭帯をつなぎ合わせる手術をする日。
昨晩は不安や緊張で寝付けなかった分、今日は寝不足で目の下にはクマが刻まれてあった。
下半身麻酔での手術。
意識はしっかりあるから手術をしているところを実際に見ることが出来る。
でも、寝不足だった私は手術室に入る前に眠りに落ちた。
――――――――長い長い、夢だったように思う。
周りの歓声が耳に飛び込んでくる。
身体は、軽い。
「on your mark…………」
カンカンカンッと強めにスタブロにスパイクを固定させる。
「set……………」
ぐっと腰を持ち上げた。
体重をかけるのは、右手2本、左手3本のたった5本の指。
パンッ!!!!
乾いた雷管の音に誰よりも早く反応することができたと思う。
隣を走る人は、いない。
独走状態。
目の前にはすでにゴールのラインが見える。
力強くそれを踏んだ瞬間………、
ワァァァァーーーーと歓声があがる。
掲示板を振り返ると
速報で11.42の文字が――――――。
あぁ、ようやく………。
徐々にガヤガヤとした声が響き出した。
自然と瞼の向こうが明るくなる――――――。
目を開けると、白い天井にクリーム色のカーテンがぶら下がっているのが見えた。


