風になれ




授業をサボりながらよく来たここ。




フェンスのところのちょうどいい段差に腰を下ろし、ふたりでならんで座った。







「治んのか?」





さっきまでの怖い顔が一変、心配する、過保護な翼の顔に戻っていた。




「うん……。」


「走れるようになんのか?」


「うん、手術……、すれば。」


「手術、するのか?」


「うん……。」








「インターハイは行けるのか?」



「………………」






忘れてた。





インターハイ。





6月の県大会で標準記録を破らなければ出場することはできない。



昨年も、一昨年も、



0.2秒、0.8秒で届かなかった世界。




中学生の時も一度も経験することができなかった世界。

行きたかった。






じゃなくて、






”行こう”





そう、決めていたはずだったんだ。








「行きたい…………。」