風になれ




「おい涼々っ!!どーしたんだよっ!?」



検査が意外と長引いて、学校に到着したのはお昼休みの時間だった。





東が焦った顔で私に聞いてきた。




「ん?何でもないよ、」



できるだけ、笑顔を繕って見せた。






「何でもないわけねーだろ。」




さっきまでいなかった翼が、


私の席の真後ろに立っていた。





「翼…………………」







キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン…。




タイミング悪くチャイムが校舎内に響いた。







松葉杖を持って座る私と、

両腕を組んで仁王立ちする翼。

そんな私と翼を交互に見つめる東。





微妙な雰囲気が3人の間に流れた。








「来いよ。」




私に言った。



翼が。



うん、と席から立ち上がり、教室を出た。





教室に戻るクラスメイトとは逆の方向に私たちは歩いた。






目的地が屋上だって、すぐわかった。


だって、出入り禁止の誰も近づかない廊下を、


少し前を歩く背中が行くから………。





階段を上るとき、私に気づかいながらゆっくりと上ってくれた。






ガチャ―――――――………。






重い、屋上の扉を翼が開けた瞬間、



冷たい真冬の風が私の頬を撫で、ブルッと身体が震えた。