風になれ




お母さんが運転するワゴン車の中で

見馴れた景色を何の感情もなく、


ただ、ぼーっと眺めていた。






「変わりなさい。」





「えっ………」





「今や過去をどんなに悔やんだって変えられない。なら、これからの未来を変えるために、自分が変わらなければ。



そうでしょ??」






赤信号で止まった車の中。

お母さんが私に品のある笑顔を見せた。









―――――これからの未来を変えるために



自分が変わらなければ。






私の座右の銘である言葉。





そして





中2の夏、初めて肉離れを経験した私に翼が教えてくれた言葉であった。




なんで怪我したんだろうと悩み続けた時、

翼が言った。





『過去は変えられない』




と――――――。






当たり前の言葉だったけど、その時の私にとっていちばん心に響いた言葉だった。









お母さんは家でもよく私が口にするこの言葉を覚えていた。



自分が、



今の自分が





変わらなきゃいけない時なんだ。