風になれ




「てかさー、山口。10kmって長くない??」


「何いってんすか、5000m4位のくせに。2倍になっただけですよ。」


「2倍を甘く見るなよ……。」





まさか10kmも走らされるなんて思ってもみなかった。




しかもこの駅伝での最長距離を誇っている。


駅伝部はよくここに1年を使ったもんだ。




まあ、山口は俺の知る限りでは距離がある方が圧倒的に強いが……。





今は待機所に指定されているコミュニティーセンターで待機中。




ありがたいくらいにあったけーよ。


外は雪降ってるし、太陽さんはどっか行っちまって、この暖房がたいてある室内とてと暖かい。







ピローーーーーン……。




誰かの携帯がなった。





ブレーカーのポケットから携帯を出した山口を見て、こいつか、と思う。






「スタートしたらしいですよ。

あと、30分ってとこですね。」



「え、もう30分しかねーのか?緊張すんなー。」



「え、翼先輩でも緊張するんですか?」




俺、そんなに緊張しなさそうに見えんのか?

樹先輩にもよく言われるし、




これでもかなり緊張しやすかったりすんだけどな……。




「緊張しすぎて身体ガッチガチ。山口、ストレッチ。」



はいはい、と俺の後ろに回って入念に10分くらいストレッチをしてもらった。





冬にユニフォームで走るなんて何年ぶり、ってレベルだからストレッチしとかないと何があるかわからないからな。







それから天国だった室内を抜け、中継所に向かった。






「高校生男子3区、点呼開始しまーーーーす。」




係員の声で一斉に中継所に人が集まった。






「青葉高校Cチームっ!」


ゼッケンを確認してもらい、中継地点の指定された場所に入った。





「えー、まもなく選手が入ります。

ゼッケン番号を呼んだら学校名は呼ばないのですぐに出てきてください。襷(たすき)はできるだけ内側でうけとってください。


それではあと2、3分身体動かして待っていてください。」




大会役員の声に何度かはーい、と答えながら話を聞き流す。




やっべえ、久々にまじで緊張してきたし……。