「あ〜も〜、マジできついわ。」
机の上に身を投げ出す。
「お前、今日は何キロ走ったんだー?」
東(あずま)が笑いながら声をかけてきた。
ったく、短距離は楽そうに……。
「8キロだけど、なんか文句でも?」
俺の言葉に東が吹き出した。
「8キロに……文句言えるやつ……いんのか??」
笑いながらで声が絶え絶えになってるこいつ、どんだけ笑ってんだ。
よくツボにハマるこいつだけど、よくわかんねーや。
結局は何がおかしいんだか。
呆れて東から目を離し、投げ出していた身体を起こして教室を見回した。
あっれ、あいつがいない。
せっかく視界から消した東をもう一度視界にいれる。
「おい、涼々(すず)は?」
「あぁー今日も。」
それだけでどういうことだかわかる。
「8キロ笑うくせに、そっちは何してたんだよ。」
「200を10本と、1分走永遠。」
長距離より15分ほど早く朝練をはじめている短距離。
『永遠』という単語は基本、30分より長い時を示しているらしい。