「な、何いってんすか!涼々はただの幼なじみですよ。」
「それから恋になることだってあるよ?」
本気なのかからかってるのかわかんねぇ。
でも、
「今は、陸上が恋人です。」
樹先輩の目を見て断言する。
俺は1500mの覇者になる。
誰よりも強い1500mの走者になりたいんだ。
「やっぱ、バカはバカだな。」
俺につられて真剣な顔をしていた樹先輩がその表情を崩して笑った。
「陸上バカはほかと違うんだ。
サッカーや野球やテニスやバスケや。
他の種目には時間がある。
……でも陸上には時間がない。
0.1秒、0.01秒でも速くゴールに辿り着くために神経を尖らせて時間とひたすら勝負するんだ。
陸上バカは他よりも一秒を惜しめないんだ。
いいバカになれよ。」
俺の頭をクシャっと崩して立ち去っていった先輩。
その後ろ姿は逞しくて、オーラがギラギラ輝いている。
てか、バカバカって、褒めてんのか??


