風になれ




「ったーーーもーーーー、はえーし。」




本音が漏れた。





結果はもちろん樹先輩の勝ち。



ざっと数えて4ヶ月は走ってないだろうに、大差をつけられた。






土の上に寝転び、肩で息をした。


先輩も同じように隣に寝転んだ。





「これから8000mのペーラン(ペースランニング)あんですよー、どーしてくれんですか。」



「やるっつったのお前じゃん?」




ずるい。


満面の笑みを浮かべる樹先輩、18なのに子供っぽすぎて笑える。




「それにしても久々に全力出したなぁ……。」




空を見上げるその横顔はさっきよ笑顔を違ってとても凛々しい。





ほんとに、表情がコロコロ変わる人。






「大学決まってるなら、これからも来てくださいよ。」


「そーだな。来るかな……… にしても翼、背ぇ伸びたな?」



起き上がった樹先輩が俺を見下ろすような姿勢になってなんかくすぐったくて俺も身体を起こした。



「まだ樹先輩には届かないですけど、174cmですよ。」


「4ヶ月で4cm伸びるとかお前つよー!」




成長期ってもんでしょ。


とは突っ込まないでおく。



だって………





「涼々を守れるような身体になってきたな。」




不意打ちでそんなこと言われたら、何も言えなくなってしまう。