久しぶりに聞く、懐かしさの声に振り返ると
「あ!樹先輩!!」
3年ぶりに見る樹先輩だった。
高校生の時よりもさらに黒くなった?
樹先輩は不思議そうに聞いてきた。
陸上との関わりを切った俺がなんでここにいるのかってね、そんな顔していた。
「来てたのか。」
「涼々に変なメール送られてきたんでね。」
カバンの中からゴソゴソと手探りで携帯を見つけ、昨日送られて来たメールを見せた。
「あいつが走るの、4時くらいだぞ?」
「やっぱり、会ったんですか…。」
メールを見せた樹先輩の反応に思わず言葉が漏れてしまった。
やっぱり、ここで走っているんだ。
ここでまだ強くなっているんだ。
一度諦めてしまった涼々だったから、
まだ一生懸命に走っているんだと思うと、自然と嬉しくなった。
「どーゆーことだ?」
わからない、というふうに頭を傾げる樹先輩に
「いえ、何でもないです。」
とだけ答えた。
「あいつ、卒業してから居場所わかんなくなったんだってな。」
「はい、俺には教えてくれたんですけど………、
卒業してから一度も会ってないし、連絡もとれてないんです。」
言葉にすると少し悲しい気がした。
今までどれだけの時間、会わずに過ごしてきたんだろうか。
心にチクリと針を刺されたようなきがした。
樹先輩を見ると、驚いた顔をしていたけど
「何が……、したかったんだろうな………。」
考え込んでいるような言い方をした。
「きっと、誰にも見られたくなかったんだと思います。」
「なんで?」
「涼々はそういう人です。
きっと何か、考えがあったんじゃないですか?
それならそれで、俺はいいです。」
結局はそうなんだよ。
涼々がやりたいとおりにやってくれればそれでいいってことなんだよ。
いつまでだって待てるんだよ。
「涼々を守れるくらいの大人になったな。」
ポンと頭に置かれた手は、俺よりも大きく、たくましい手だった。
いつだって勝てないもの、
それは、愛情なのかもしれない。


