風になれ




東京の街は思っていた以上に混んでいた。


まあ、土曜日だから仕事が休みの人とかも多いのだろう。

空いていた飲食店で軽くご飯を食べ、競技場までバスで向かう。



別に車で来てもいいんだけど、帰りが何時になるかわかんないから夜遅いのはごめんだし、駐車場ないともっと困るし、ってことでここまでかなりの金をかけてやってきた。




「やっぱひれーなー。」



テレビ中継もするらしい。

設備も全部が整っている。

なにせ、サブトラックが二つもあるなんて、
全国を見て回ってもこの競技場くらいだと思う。



俺はどうしたらいいかわからず、
とりあえず結果が載っている掲示板まで来た。




涼々がどれくらいで、どんな風に走っているかわかると思ったから。




『7月15日』

と書かれた掲示板を見つけ、女子100mの記録を探した。


組ごとの細かい結果は残っていなかったけど、総合の順位が残っていた。



「まじかよ……。」


思わず笑ってしまうのも仕方ない。



だって



『予選総合


1位 新田涼々 11秒76
秀徳経済大学 2年 』



俺が今まで見た中で最高のタイムだった。


どんだけ速くなってんだよ。



しかも




『準決勝総合


1位 新田涼々 11秒41
秀徳経済大学 2年 』




自己ベストを遥かに更新して走っているのは見ての通りだった。




しかし、1日で100m、0.3秒も速くなんのか?


異例な記録を出している涼々を考え、苦笑いを零した時………







「翼??」