風になれ




『もしもし……。』


涼々から電話がかかってきた事があった。




去年の冬。



ちょうど2年前に怪我をした時期だった。




『懐かしいね。いっぱい泣いてたよね。』


振り返るように、懐かしんでいた。




「頑張れよ、待ってるから。」


『うん、待ってて。』


10分くらいの電話だった。




それから一度も話していない。






あいつはどんな風に変わったんだろう。


俺はまだまだ成長期らしく、身長はついに180cmに達した。
まあ180cmに届いた瞬間、ピタリと止まってしまったけど。

髪も、少し暗いけど茶色くした。
涼々に会ったら絶対合わないって言われそうだけど。





普通の人から見れば、付き合ってるのに連絡もとらないで会うこともなくて、

そんなカップルおかしいと思われても仕方なかった。




だけど、こうして割り切って自分の道を進む時間も必要だと、俺たちはちゃんと理解していた。


理解した上で、お互いの手を離したから。





まだまだ俺らには時間がたくさんある。




だから、そのうちのひとときを

自分のために使うことにしたんだ。







俺はもっと長い期間、涼々に会うことはないと思っていた。






10年経って、諦めて帰ってくんのか?

そんなレベルだった。









ピローーーーン。







そうやって物思いにふけってベッドにひとり、横になる午後9時。


明日はようやく土曜日だ。


やっと休める。


携帯は俺の瞑想を邪魔するようになった。






「誰だよ………。」




充電器に挿してあった携帯を引っこ抜き、メールの受信欄を開いて、



目が一気に覚めた。







From 涼々。







急いで内容を確認すると



▶▶▶


〇〇競技場

午後2時


▶▶▶




とだけが記されてあった。




わけわからねぇ、暗号か?これ。



でも競技場の名前ははっきりとあった。

てかこれ、東京じゃねーかよ。

マジで来いってのか?



考えて、考えた。



最初は涼々の思考が読み取れなくて悩んでいたけど






「あーーーーーーーーっ!!!!!」





俺は思わずベッドの上で叫んでしまった。




涼々からのメールを閉じると同時にパソコンを再び起動させた。

Yah××!

で打ち込んだ文字。



それは





『全国大学選抜』