俺は青葉高校を卒業した後、経済を学べる大学に進学した。


全国大会に出場したこともあったから大学からのスポーツ推薦も来たが、すべて断った。




別に、陸上が飽きたからとかそういうわけではない。




ただ、陸上を続けたらこの先何があるか本当にわかなくなってしまうと思ったから。

たぶん、俺はそこそこの実力を持って、
そこそこの成績を残して、
そこそこ有名な企業に入って、
またそこそこいいかんじで暮らすことになる。



それはプライドが許さなかった。



そこそこじゃダメなんだ。




しっかり涼々やこれからできるであろう家族を養っていくためには、やっぱり陸上との縁を切ることしかなかった。




涼々は俺の意見に誰よりも反対した。




『私のためとか考えなくていいから!私だって自由に私のしたい事をしたいから。』




だけど、これが俺のしたいことだった。

だから陸上から離れ、今までおろそかにしてきた勉強に真正面から向かってみようと思ったんだ。



大学生になってから勉強に本気を出すなんて遅れてるのはわかってる。




だからこそってところもあった。





普通の大人になりたい。



それが夢だった。




小さい頃は消防士とか

宇宙飛行士とか

そんなほんとに夢を自由に見ていた。



だけど今の俺は、金融機関で働いてみたい。



それが一番しっくりきた気がしたから。






週5日通って、土日は友達といろんなところに行った。

時間がある時だと沖縄とか北海道とか、

そういったところまで様々まわった。





一人暮らしでアルバイトでどうにか暮らせる。


そんな生活を1年ほど続けていた。




たまには涼々のことを思い出した。


今どんな気持ちでこの空見てるんだろうとか。


怪我してないだろうな、とか。



どんな練習してんだろうとか。





連絡するのがなんか怖くて、いつも涼々の電話番号を開いても、電話をかけることはなかった。





でも1度だけ