風になれ




男子の100mの予選は女子の後にある。


招集場所に早く向かい、涼々を探そうとしていた。





でも、それよりも先に………






「樹先輩??」


「涼々……。」





涼々に見つけられてしまった。


小麦色に焼けた肌。
ショートヘアの黒髪。
最後に見た時より若干痩せたか?
また少し全身が引き締まって見えた。





「奇遇ですね、先輩も100ですよね?」


「あぁ。……それよりお前、11秒89ってどこで出したんだ?予選会………、いなかっただろ。」




そうだ、予選会で記録を突破いなければここには立てない。
しかも涼々が通う秀徳経済大は東邦大の近くだ。
ブロックは同じなはず………。



「あれは、春季大会の記録ですよ。
なんか先生が公式の大会出させてくれなくて……。
まぁ出たくないって言ったこともあるんですけど、
そしたら先生が出れるように申請してくれたらしいです。
標準は一応切っているので!」



そう、宣言した涼々。

たしかに、標準記録を突破しているからなにも問題はない。



「見ててくださいね、昨日の予選と準決勝。
必ず、一位通過しますので。」



挑発的な笑みを見せ、招集所に走っていってしまった。



自信ありすぎだな……。



涼々の笑顔を思い出し、つられて俺まで笑えてきた。




俺だって負けねーよ。







見てろよ………。



涼々!!