風になれ




涼々の記録は確かに新記録としてたたえられた。


追い風0.1m。参考記録ではなく、しっかりと記録が樹立した。





やったじゃん―――――。





インタビューされた時、涼々は涙を流していた。




なぜか俺まで嬉しくなって、



「っ――――――。」


俺まで涙が出ていた。





ずっとずっと、見ていた世界の頂点に立った。




いつの間にか幻とも思われていた涼々の全国大会出場。

でも今、ここでこうして表彰台のてっぺんに登りつめた。





俺は全力で走りたくなってきて身体が疼いた。




普段は早く起きたから走ろうとか、そんなふうにしか思わなかった。

それなのに、今は全力で走りたくて仕方ない。




出していたものを全部片付け、ランパンとTシャツに着替える。



それは




『青葉高校 track & field.』



と刻まれている、俺の青春の証。






もう、陸上とはかけ離れた世界にいる俺だけど、


まだまだ切っても切れないらしい。






「あっつーーーー。」




外はガンガン日が照っていたが、むしろそれが俺の心を奮い立たせる。




行くぞ、俺――――――。






高跳びができるほどのマットや道具はないがそれでもいい。


100mだって俺の得意種目だ。


息を吸って、





田舎町の道路に飛び出した――――――。