風になれ




《side つばめ》




「つばめ、明日行けそうだけどどうする?」



夜、家で勉強をしているとじーちゃんに聞かれた。





俺は高校を卒業したあとは、

宣言通りに東北に住むじーちゃんの漁を手伝いに来た。



そして、独学でスポーツについて学んでいる。





「んー、明日はいいかな。
どうしても見なきゃ行けない番組があるし?」



「陸上か?」



じーちゃんは俺が陸上が大好きだってよく知ってる。

だから、大事な陸上の番組を逃さないようにって、
俺に次の日の漁に出れるかを聞いてくれる。





「あぁ。もしかしたら、俺の大事な人が出るかもしれなくて。」




明日は大学選抜がある。


もしかしたら涼々が出るかもしれない。




もし出なかったとしても、樹先輩が出ると有姫から連絡があったから見なければいけない。





「まだまだ若いんだ、好きなことたくさんやれよ?」





俺の頭をグシャッとなでるじーちゃん。



顔を上げるとニカッと歯を見せて笑い、寝床へと消えていってしまった。





「はぁーーー。」




開いていた参考書や資料やらを全部閉じる。

明日………。




涼々の居場所がわかるかもしれない。






『いつか必ずわかるから!』





卒業式の日のあの言葉。

今も忘れられない。




あいつのことだから絶対陸上から離れるわけがない。

だから、淡い期待を持って今までの陸上番組は全てチェックした。


だけど、そのどれにも涼々が出てくることは無かった。








「どこにいるかくらい、教えろよ………。」





ヒューと開いていた窓から生暖かい夜風が吹いた。