朝、普段より早く起きたあずみは部屋から出ると声を掛けられた。

「椎名さん」
「あ・・・おはよう御座います、大家さん」

大家は50代後半のお喋り好きな老婦人で、この人に捕まると最低20分間は足止めを喰らう。
あずみは腕時計をちらっと見ると

「あのぉ、すみません。大学に行かないといけないので・・・」
と言った。すると大家は言いにくそうに口を開いた。

「あのねぇ、私ももうちょっと早く言おうと思ってたんだけど、椎名さんは夜遅くまで帰ってこないでしょう？それで遅く成っちゃったんだけどねぇ」
またいつものお喋りか。と内心溜息をついたが、よく見ると大家の表情が暗く、話も回りくどい。
「・・・悪いんだけどね、来月中にはマンションから出ていって貰いたいのよ」
「え、ええぇ？！どうしてですかっ？」

大家さんの話は、こうだった。

このマンションは以前から老朽化が進んでいた。
そこにスーパーを作らないかという話が来たらしい。
スーパーの方が家賃より収入が良いようだ。


「そんな・・・」

これが本当のダブルパンチだ。