信号での右折に時間を食っているバスに感謝。
バス停の最後尾に並べば、目の前に見覚えのある顔。
というのか、見知った顔。
「栄夏!」
「あ、向日葵じゃん」
同じ時間にホームルームが終わって、私よりドアに遠いというのになんでここに……。
「栄夏、速いね……」
「去年のマラソン大会一位実力者をなめちゃダメだよ」
「そう……だね」
まだ少し息がキレる。
そう、栄夏は短距離も長距離もお手のもの。
マラソン大会で去年、一位に輝いたばかりだ。
陸上部からの勧誘が来てるのに、いつもやんわりと断っている。
少し遅れて到着したバスに乗り込み、二人でつり革に掴まった。
心なしか、人が多い気がする。
「ねぇ……あれ、優翔?」
栄夏のいう方向を見れば、確かに同じバスの中に武田君がいた。
「……どこに行くんだろうね?」
彼の手には馴染み深いナイロン素材の袋。
「あれ、星哉のだ」
「届けに行く……のかね?」
隣で栄夏が訝しそうに眉を寄せる。


