「あ〜今日は楽しかったね!」
「そうね。案外楽しかったわ」
「もうーそんな事言わないの」
正直な感想よ。だって、朝は最悪な一日になると思ってたんだもん。
でもまぁ、如月が男らしいとか、優しいってことが分かったのは良かったかもね。
まぁ、好きではないけど。
「じゃあ、そろそろ解散だね。」
「そうだな〜...じゃ、俺はもちろん朱理を送ってくから」
「そ。じゃ、私は帰るか「じゃあ俺は冬坂さんを送るよ」
は?
「うん!ちゃんと、送ってあげてね!」
「頼んだぞ、冬樹〜」
またね〜と手を振る朱理たち。
ちょっと待ってよ。なんで送ってもらわないといけないの...??
「...如月。私ひとりで帰れるから」
「嫌だ。」
「はぁ!?嫌って...あんた子供か!」
「だって、冬坂さんひとりで帰らせるなんて...なんか危ないじゃん?」
「...過保護か」
「あはは、そうかもね、暗くなる前に早く帰ろ」
サラッと私の手をつかんで引っ張っていく如月。
「ちょ、何この手!?」
「ん?俺の手...だけど?」
「そういう事じゃなくて!なんで繋いでんの!? 」
私がそう聞くと...後ろを振り返って私と向き合う形になった。
「...っ......」
「...どうしたの?」
「......冬坂さん、顔真っ赤」
っ...はぁ!?
「そんなわけないでしょ!?からかわないでよっ...!」
手を振り払おうとして、一回手が離れるも、もう1度繋がれてしまった。
今度は...“恋人繋ぎ”と呼ばれる代物で
「ちょ、なんで...」
「だって...こんなに照れてる冬坂さん初めて見たし、なんか...」
にやっと笑った如月は、私の耳元で
“いじめてみたくなるから”
「っ!!!」
自分でも赤いって言うのがわかるくらい顔が熱くなってきて、何も言葉が出てこなくて、如月を、睨むことしか出来なかった。
「っちょ...それはダメでしょ...」
「...は?なにが?」
ジーッと睨みながら反抗するような言い方で聞き返すと
「...どっちが、無自覚天然なんだか分かんねーじゃん...」
「は?なんて?」
「なんでも...」
いったい何を言ったのか全くわかんないんだけど...?
今度は聞き返す間もなく、前に進んでいる如月。
...手、意外と大きいんだ
って、何考えてんだ私!
今なら振り払えるこの手を、私は振り払ってない
嫌ならさっきのように振り払えばいいのに
振り払わなかった。
なんで?
“如月と手を繋ぐのが嫌じゃなかったからでしょ?”
そんな考えが頭によぎる。
...ううん、ありえないありえない。
繋いであげてるだけ
如月が勝手に繋いでるだけ
ただ、繋いでるだけ
そう自分に言い聞かせた。


