『あんたなんて...あんたなんて.....大ッ嫌いよ!!』

『へぇ...じゃあ好きにさせてやるよ。俺のこと。』




映画が始まって約30分。
まだ始まったばかりの映画だけど、私は既に帰りたい。


少女漫画を実写化した映画らしいけど、本当にカップルが多い。


あー、帰りたいよー
帰って部屋でゴロゴロしたい


ていうか、眠くなってきたし......
映画館って暗いから...ちょっとくらい寝ても...バレないよね...?









「冬坂さーん、起きてー?」

「んっ......如月?」

「うん、俺。冬坂さん寝不足なの?すごい爆睡してたけど」

「...っえ?まさかもう映画終わったの!?」

「うん、ついさっきね。秋音と朝日奈さんは先行ったよ?」

「ちょ、起こしてよね!」

「だって気持ちよさそうに寝てたから」



っ!寝顔見られた!?


「お、女の子の寝顔見るなんていいご趣味で!!!」

「ちょ、声が大きいよ、俺が変態みたいじゃん」

「変態じゃん!」

「俺は冬坂さん以外の寝顔に興味無いよ!」

「っ...そういうことをサラッと言うなぁ!」





映画館を1人でさっさと出て、ショッピングモールの中にある洋服屋さんの前に行くと、朱理と上村がしゃべっていた。



「朱理」

「...あ!凛月!如月くんは?」

「知らない。ほってきた。」

「え?ちょ、あいつめっちゃ方向音痴だから、ひとりで歩かせるのは」

「...え?」

「それって、やばいんじゃないかな?」

「...」

「多分、あいつ今、めっちゃ、迷ってると思う」

「...」

「あー、どうしよう、探しに行かないとだよね?」

「...あぁもう!!わかった!!私が探しに行ってくるから!!」

「えっ?ほんと〜?ありがとう、凛月!!」

「じゃあ、俺らここで待ってるから、よろしくね〜」



手をひらひらさせて私を送り出す2人



ほんっとイラッとする!






映画館まで戻って、周りを見渡すけど姿は見えなくて、近くのお店に入ってみても、全然見つからなかった。


...ほんとに、方向音痴だな...


フードコートのあたりに来ると、如月らしき後ろ姿の人を見つけ、話しかけようとすると...



「ねぇねぇ〜、1人なの?」

「は?」


私の目の前に急に現れた2人組。
1人は茶髪で、もう1人は変な髪の男。


誰こいつら


「いや、1人じゃないです。今、人を探してて...」

「え〜?じゃあ俺らも探してあげるからさ、向こうの方行こうよ」


茶髪の方が指さした場所は、明らかに人気のない方。
...めんどくさ


「いや、結構です。私、もう見つけたんで」

「え?なに?俺らのこと信用してない感じ?大丈夫だよ〜何もしないからさ〜」


いや、初対面で「信じます〜」なんていう人いないから。
ていうか、何もしないっていう人に限ってなんかするから。


「ちょっと、鬱陶しいですって...」

「いいじゃん、ね?」


グイッと腕をつかまれ、私は引っ張られてしまった。

「ちょ、やめて...っ...」


私が声を出した瞬間、もう片方の手が引っ張られ、私はそっちの方に倒れ込む形になってしまった。
なんか今日はよく引っ張られるなぁ...じゃなくて!!
誰!?





「.........あ...」

「俺の彼女になんか用?」

「は?...チッ彼氏持ちかよ。」

「いこーぜ」



...............如月。

2人組が立ち去った後、後ろを振り向いた顔を見て、私はもう1度驚く。



...なんでそんなに怒ってんの


「あのさ...」


いつもの如月の声よりもずっと低い声で、私は背筋が凍ってしまった。

「な、なに?」

「...無防備にも程があるだろ!冬坂さんは可愛いんだから危機感持ってくれないと俺が困る!」

「...な!可愛くないから!!サラッと変な事言わないでよね!私はあんたを探しに......」

「...え?そうなの?...それは、ありがとう。でも!今俺が来なかったら、冬坂さん危なかったんだよ!」

「自分でなんとか出来るし!」

「...出来ないこともあるから、言ってんだろ...」



...こんなに怒った如月初めてみた




「...ごめん。でも、良かった。あと、探しに来てくれてありがとう」

「......いーえ。こちらこそ......ありがと......」

小さい声で言ったから聞こえたか分からないけど、小さく笑った如月をみて
私はどこか安心した。



そのあと、朱理たちと、合流し、洋服や靴を見て回った。



そして、ちょうどアクセサリーを見ている時、


「...あ...」

「ん?どうしたのー?」


朱理が私の持っているものを見て、


「あ、ネックレス?」

「うん。この形...」

「月の形がどうかしたの?」

「...ううん、ただいいなって思っただけ」


そういいながら私はネックレスを棚に戻した。


「あれ?買わないの?」

「うん。ちょっと、高いかなって」



今月にある遠足のためにも、お金は残しておきたいから、そういうと、そっかぁと笑った朱理。



「...」


「ん?なに?如月」

「いや...何でもない」



私は、特に気にすることなく、他のアクセサリーを見て回った。

やっぱり、女子ってこういうアクセサリー店とかに入ると、時間を忘れて楽しんじゃうもんよね